サイバー保険の基礎知識
「企業にとって、もはや他人事ではない」 近年、そう言われることが増えたサイバー攻撃による被害。しかし、その備えとして「サイバー保険」の加入を検討しているものの、「実際、保険料はいくらかかるの?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?この記事では、サイバー保険の基礎知識から、気になる保険料の相場、そして具体的な事例までご紹介します。
サイバー保険とは?
サイバー保険の必要性と役割
現代社会において、企業活動はインターネットに大きく依存しています。顧客情報や企業秘密など、重要なデータはネットワーク上に保管され、日々やり取りされています。しかし、この利便性の裏には、サイバー攻撃による情報漏洩やシステム障害といったリスクが潜んでいます。サイバー保険は、まさにこのようなリスクに備えるための保険です。
万が一、サイバー攻撃によって損害が発生した場合、保険金を受け取ることができ、企業の事業継続を強力にサポートします。
サイバー保険の保険会社と代理店の役割
損害保険会社: サイバー保険を提供する損害保険会社を指します。保険契約者: サイバー保険に加入する企業や組織のことです。
保険代理店: 保険代理店は、保険会社と損害保険代理店委託契約を結んだ販売店です。 保険代理店の代わりに保険を募集し、契約を締結します。
保険契約者は、保険料を損害保険会社に支払うことで、サイバー事故による損害発生時に保険金を受け取る権利を得ます。
サイバー保険の種類
サイバー保険は、提供する保険会社やプランによって様々な種類があります。主に以下の3種類の保険に分かれているため、順を追って説明いたします。
1. サイバー保険(一般企業向け)
2. 個人情報漏洩保険(サイバー保険の情報漏洩のみのプラン)
3. サイバー保険 IT業務向け(サイバー保険のIT業務向けプラン。主にシステム開発等のIT業の企業向け)
※現時点で、個人向けのサイバー保険の保険商品は販売されていません。
1. サイバー保険(一般企業向け)
一般企業向けのサイバー保険の補償範囲は「損害賠償責任」「事故対応費」「利益損害費」です。サイバー攻撃に遭ってしまったり、社内のミスで起きたサイバー事故の際に、サイバー保険に加入しておけば下記のような補償(保険金の支払い)がされます。
サイバー保険(一般企業向け)の主な補償範囲
サイバー保険の補償範囲は下記の①~③がメインの補償です。いずれもサイバー事故を防止するものではなく、サイバー事故が起きた際の経済的ダメージを軽減させるための補償です。そのため、セキュリティ対策とは別のダメージコントロールの態勢作りの一環として、サイバー保険が必要とされています。
※下記の補償範囲は一般的なサイバー保険の補償範囲ですが、保険会社やプランによって内容が若干異なります。
①損害賠償責任
被保険者(補償の対象者)が法律上負担する損害賠償金や、争訟費用等による損害を補償します。
・損害賠償費用
・訴訟対応費用
②事故対応費
サイバー事故に起因して一定期間内に生じた各種の事故対応にかかる費用を補償します。
・事故原因調査・復旧費用
・システムの復旧作業費用
・事故の再発防止策定費用
・弁護士・コンサルティング会社への相談費用
・コールセンターの設置費用
・ユーザーへのお詫び費用
・イメージ回復に伴う広告宣伝費
③利益損害費
ネットワークを構成するIT機器等が機能停止することによって生じた利益損害や営業継続費用などを補償します。
・システム停止中の利益損害
・収益減少防止費用 ・営業継続費用
サイバー保険(一般企業向け)はどんな事故が補償される?
サイバー保険の補償は、下記のようなサイバー事故が補償されます。1. 情報の漏えいまたはそのおそれ
2. ネットワークの所有・使用・管理に起因する他人の業務阻害
3. サイバー攻撃に起因する他人の身体傷害・財物損壊
2. 個人情報漏洩保険(サイバー保険の情報漏洩のみのプラン)
個人情報漏洩保険の補償範囲はサイバー保険に比べて限定されており、「情報の漏えい、またはそのおそれ」の起因したサイバー事故だけに、「損害賠償責任」「事故対応費」のみが補償(保険金の支払い)がされます。個人情報漏洩保険の主な補償範囲
※下記の補償範囲は一般的なサイバー保険の補償範囲ですが、保険会社やプランによって内容が若干異なります。①損害賠償責任
被保険者(補償の対象者)が法律上負担する損害賠償金や、争訟費用等による損害を補償します。
・損害賠償費用
・訴訟対応費用
②事故対応にかかる費用
「情報の漏えいまたはそのおそれ」の起因したサイバー事故に起因して一定期間内に生じた各種費用を補償します。
・事故原因調査・復旧費用
・システムの復旧作業費用
・事故の再発防止策定費用
・弁護士・コンサルティング会社への相談費用
・コールセンターの設置費用
・ユーザーへのお詫び費用
・イメージ回復に伴う広告宣伝費
個人情報漏洩保険はどんな事故が補償される?
個人情報漏洩保険の補償は、情報漏洩が起因した事故に限定した補償です。サイバー保険とは異なり、例えば「不正アクセスがありECサイトが改ざんされた」「ランサムウェア攻撃により情報漏洩はなかったものの、システムやデータが破損した」「システムの乗っ取りにより、工場に火災が発生し近隣住人を巻き込んだ」のような事故では、情報漏洩がされていないため補償がされません。
なお、情報漏洩の範囲は個人情報だけではなく、取引先情報や営業秘密(企業秘密)の漏洩も含まれます。(こちらはサイバー保険も同じです)
サイバー保険と個人情報漏洩保険の違いの詳細は、下記記事をお読みください。
▼サイバー保険と個人情報漏洩保険の違いをわかりやすく解説!【2024年版】
3. サイバー保険 IT業務向け(サイバー保険のIT業務向けプラン)
サイバー保険 IT業務向けは、ITサービスやシステム開発等の事業を行っている企業向けのサイバー保険です。主に、IT事業特有のリスクについても補償が必要となります。
例えば開発したシステムの脆弱性を狙ったサイバー攻撃による、クライアントからの損害賠償等が補償されます。
【対象となる主なIT事業者の例】
ソフトウェア開発
レンタルサーバー会社
クラウドサービス運営会社
セキュリティサービス会社
情報処理サービス業者
HP制作会社
サイバー保険 IT業務向けの補償はサイバー保険の特約オプションや単体の保険として用意されていますので、詳細をご案内している下記記事をご確認ください。
▼【IT事業者必見】IT事業者のリスクとサイバー保険について解説
▼IT業務用 サイバー保険のご案内
保険料の計算方法
保険期間と保険契約の影響
サイバー保険の保険料は、下記のような要素を元に算出されます。業種: 情報漏洩やシステム障害による影響が大きい業種は、保険料が高くなる傾向があります。
従業員規模: 従業員数が多いほど、情報漏洩などのリスクが高まると考えられるため、保険料が高くなる傾向があります。
売上高: 売上高が多いほど、サイバー攻撃による損害が大きくなる可能性があるため、保険料が高くなる傾向があります。
セキュリティ対策状況: 強固なセキュリティ対策を講じている企業は、保険料が割安になる場合があります。
保険金額: 保険金支払いの上限額が高額であるほど、保険料も高くなります。
免責金額: 免責金額が高額であるほど、保険料が割安になる場合があります。
保険契約のプロセス
契約前の情報収集と相談
サイバー保険への加入を検討する際には、まず、複数の保険会社から資料を取り寄せ、比較検討することが重要です。また、保険代理店に相談し、自社のニーズに合った保険商品やプランを選定してもらうことも有効です。保険料の支払いと保険期間
保険契約が成立したら、保険料を支払います。サイバー保険は損害保険なため、請求書払いが一般的で保険期間は通常1年間です。月額払いやクレジットカード払いをご希望の場合はお知らせください。
事故発生時の対応と賠償損害
万が一、サイバー攻撃によって損害が発生した場合は、速やかに保険代理店または保険会社に連絡し、必要な手続きを行いましょう。保険金請求の手続きは、保険会社によって異なりますが、一般的には、以下の流れで行われます。
1. 事故の発生: サイバー攻撃による損害が発生した場合、速やかに保険会社に連絡します。
2. 事故状況の確認: 保険会社は、事故状況や損害の内容について確認を行います。
3. 必要書類の提出: 保険金請求に必要な書類を保険会社に提出します。
4. 保険金の支払い: 保険会社は、提出された書類に基づいて審査を行い、保険金の支払いを行います。
サイバー保険の保険金の支払い事例やタイミングの詳細は、下記記事をお読みください。
▼サイバー保険の保険金の支払い事例・支払いタイミング、支払われない例は?
補償対象外の事故とその対応方法
保険金が支払われないケースとしては、以下のようなものが挙げられます。・保険契約者自身の故意または重大な過失による損害
・戦争やテロなどによる損害
・保険契約締結前に発生していた損害
まとめ
本記事では、サイバー保険をご検討いただいてる皆様へ、サイバー保険の基礎知識や補償範囲、保険料等の解説をしました。 サイバー保険についての疑問が本記事でご理解いただけたでしょうか。残念ながら、どの企業もサイバー攻撃を受ける可能性がり、サイバー攻撃のリスクをゼロにすることはできません。
しかしサイバー保険に加入しておくことで万が一の際に生じる損害や多大な労力から自社を守ることが可能です。
今、サイバー保険への加入を悩んでいるのであれば、ぜひこの機会に検討してみてはいかがでしょうか。
サイバー保険を選ぶ際は、大手保険会社の中で比較、検討することをおすすめします。
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【取り扱いのある保険会社】
東京海上日動火災保険株式会社
三井住友海上火災保険株式会社
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